withコロナ ~ご近所観光のススメ~

観光

青森県は先日、県をまたぐ移動の自粛を6月19日に全面解除することを決めた。観光面ではまず県内観光から徐々に始め、感染状況をみながら8月1日をめどに本格的に県をまたぐ観光振興に取り組む方針だという。 青森県の三村申吾知事は危機対策本部会議で「全国的な緊急事態宣言の解除は大きな区切り。感染予防対策の定着を図りながら、経済回復の流れを確実なものにしていきたい」と語った。

先が見えない状況の中で、何が正解かわからない。コロナウイルス第二波、第三波の恐れも懸念される。一方で経済も悲鳴を上げていている。 観光分野においても、ウイルスの拡大が収束に近づき、ある日突然需要が戻るわけではなく、かなりの時間がかかることが想定される。インバウンドについては特に顕著であると思われる。星野リゾートの星野佳路代表は、彼独自の予想として、観光が本来の状況に戻るまで18カ月はかかるだろうと語っていた。

懸念される第二波、第三波とどのように折り合いをつけながら経済をまわすか、知恵や工夫が求められると。 国も県も感染状況をみながら8月1日をめどに本格的に県をまたぐ観光振興に取り組む方針だという。まだまだ予断は許さないものの、願わくはそうなってほしい。でも、油断は大敵である。この局面を乗り切るには、やはり安心・安全を前提とした知恵と工夫が必要だ。

星野代表が提案しているものの一つに「マイクロツーリズム」というのがある。これは、地元や地域を観光してみようというツーリズム。簡単に言えば「地元・ご近所観光」。 自分の家から10分、15分、30分、1時間の近距離を観光してはどうか、コロナが終息してもインバウンド需要が戻るのには時間がかかるだろうから、観光事業者はまずそのご近所観光の需要を狙ってみてはどうか、と提案している。 今回の新型コロナウイルスによる世界的な外出自粛の期間を、地元の人達が地域の魅力を再発見する機会にしながら、域内観光で経済を少しずつ動かしていくことから始めてはどうだろうというもので、この「地元再発見」の考えは観光業界に身を置いていた自分の長年のライフワークと合致しており、大いに賛同するところである。

消費者の観光マインドは、これまで出来ればなるべく遠くへ旅行したい。自分の暮らす街にはない、文化、食、風景等を体験したい、味わいたいであった。地元にもいい観光地、資源があっても、近場はいつでも行けるとついつい後回しとなり、結局、行く機会を逸してしまい、身近な地元の良さ、魅力に気がつかず、もったいないことをしていた人が多いと思う。 私はこのコロナウイルス騒動の危機を逆に地元再発見の機会とポジティブにとらえ、地元の人々がこれまであまりにも身近で意識していなかった地元の観光地を知る「地元・ご近所観光」を展開するべきだと思う。地元観光は県をまたいだ長距離観光ではないので、ウイルスの蔓延の心配も少ないという利点もある。何より、地域の人々が地元の良さを知らなければ、自信をもって観光客を呼び込むことはできないし、本当の意味での強い観光地づくりを目指すにはこの部分をないがしろにしてはいけない。幸い、ここ数年、青森県内各地で「まち歩き観光」の取組が行われ、県内40市町村中半分以上の市町村で、名物まち歩きガイドが育ち、まち歩きツアー商品が整備されている。一県にこれだけのコンテンツがあるのも全国的に珍しい。これらコンテンツは何も他所から来た観光客だけのものではなく、実は地元の人にこそ参加してほしい。知ったつもりでいた地元や、隣町も身近すぎて実はその本当の魅力を知らない場合が多い。同じ青森県でも、津軽、南部、下北と、各エリアともそれぞれの土地で育まれた文化、言葉、ライフスタイルそのものも異なっている。県内にいても十分異文化体験が出来るのだ。各エリアの人々が互いに行き合いっこしながら、交流や相互理解が深まれば最高だ。

青森県では、新型コロナウイルスの影響で落ち込む観光需要を取り戻すため、まずは県内から掘り起こそう!と県民を対象にした1泊あたり実質5000円の割引きになる キャンペーンの展開を打ち出した。夏休みの時期に、県民を対象にした宿泊プランを販売する旅館やホテルに客室10室以上で 50万円、それ以外には20万円を支援し、この支援策により 1泊あたり実質5000円の割引きにするというもの。地元のホテルの外観等は知っていても、客室、朝食、サービスの内容を知っている人、経験している人は少ない。この機会に地元の人が観光客目線で地元のホテルに宿泊してみてはどうだろう。こういう時でなければ、なかなか体験する機会がないかもしれない。宿泊施設側も地元の人の意見、声を聴く機会になり、今後の運営、改善等に役立てるヒントが生まれるかもしれない。

こういった様々な支援策を活用し、近場でもうまく旅をカスタマイズできれば、リフレッシュにもなり知的充足感も満たせるはず。「ただでは転ばない」という言葉ではないが、先が見えない不安な状況も悲観ばかりではなくなるはずだ。

早速、弘前観光コンベンション協会が、このマイクロツーリズムの観点で、今年リニューアルオープンした重要文化財「旧弘前偕行社」と太宰治が弘前高校在学中に下宿していた「旧藤田家・太宰まなびの家」等を巡る街歩きツアーの開催を発表した。今後は他の街歩きツアーも随時開催していくという。自粛に疲れ気味の皆さん、リフレッシュを兼ねて「地域を知るプチ旅」にぜひ参加してみてはいかがでしょうか? https://machi-aruki.sakura.ne.jp/

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